『猫模様』というタイトルで友人がエッセイを書きました。よろしければご覧ください。
※友人に利用の許諾を得ています。
エッセイ『猫模様』―僕はトラ猫で良かった―
猫社会問題
今、猫社会では大問題が起きています。トラ猫がどんどん増えてきているのです。あっちもこっちもトラ猫。
こんなにトラ猫だらけだと、今に誰が誰だかわからなくなる―。とうとう「あんた、だ~れ?」「ほら、僕だよ~。色が薄くって、しっぽに点々あるだろう。」なんて会話もきかれるように。
ある日、トラ猫のトラ君はおかあさんに言いました。
「おかあさん、僕の大好きなミケ子ちゃんがね、お友だちと『トラ模様なんて、みんな同じで、ありきたりよね』って話していたよ。ミケ子ちゃんが言ったんじゃないけど、友だちが言ったら笑ってた・・・。ちょっと悲しかったよ。どうして僕はトラ模様なの?」
おかあさんは考えながら「確かに最近はトラ猫が増えてきて―。どうなっているのかしら?でも、トラ猫模様って、まるでトラみたいで強そうで、おかあさんは大好きよ。」と言いました。
トラ君が、「おとうさん、トラ猫だったんでしょう。」と言うと、おかあさんは、「ええ、とっても狩りの上手なハンターで、ステキなトラ模様で・・・死んでしまったけどカッコ良くって―。」と、いつもと同じように話すのでした。
トラ君は、お空にいるかもしれない「神様」に、トラ猫ばかりで困っていることを訴えに行くことにしました。野こえ山こえ、一匹で冒険です。だけど日が暮れて段々疲れてお腹も空いてきました。「もう死んでしまうのかな?」と山の上で寝転んで空を見上げていました。空にまたたく星を見ていたら頭がボーっとしてきました。お星様のひとつがきらめいて、流れて大きな光になってトラ君をつつみました。
猫神様へお願い
ここは空の上の猫神様の領域です。
トラ君はぼんやりした頭で目が覚めました。何やらブ~ンという音がきこえます。
ここは?
ブ~ンという音のところを見るとコピー機があって、トラ猫模様が次々に出てきているではありませんか!!
「あ~!!これは~!!」
横で「グーグー」いびきが聞こえます。ベッドの上で猫神様が寝ているではありませんか!!
「神様神様、起きてください。お願いします。ネコ社会ではトラ猫が増え過ぎて困っています。」
神様が起きて「ややや、こんな所にただの猫が入ってこられるとは!」と驚いて言いました。
「最近ワシも年をとってニャ~。なかなか一品もののネコ模様を描けなくて、ついついコピーに・・・。でも、色を少し違わせたり、薄い色にしたり、時々、原本の模様を違わせたり・・・工夫はしておるのじゃ。少しずつ模様を違わせて一品ものになる仕組みも取り入れておるし・・・。それに何よりもワシはトラ模様が大好きでニャ~!トラみたいで強そうでカッコイイだろう。トラ猫がいっぱい増えてもかまわないと思っていたのだが・・・。―まあ、今度からは、またバランスをとって作るとしよう!」
トラ君は、「神様、本当?お願いします。」と頭を下げました。
神様が言いました。「せっかくここまで来たのだからひとつ願い事をかなえてあげよう!ワシに何をしてほしい?」
トラ君は、「神様が若返って元気になりますように。そしてステキなネコ模様がいっぱい描けますように。」と答えました。
神様は「ワシの身体の願い事をしてくれるとは・・・。ワシはお前の身体の方が心配だが・・・。お前の身体は野山のイバラで傷つきボロボロになっておるし、お腹の中は空っぽで何も入っていないのがわかる。このままではお前の命は尽きてしまう。すぐにおかあさんの元に帰してあげよう。」と言ってネコ足魔法ステッキをふると、ステッキがピカピカ、七色に光りました。
僕はトラ猫で良かった
気がつくとおかあさんがトラ君の身体をペロペロなめながら心配そうにみつめていました。
「あ!おかあさん!神様に頼んできました!神様が『わかった!』って。」
おかあさんは「この子は何を言っているのやら。こんなにボロボロになって帰ってきて、死んでしまうかと心配しましたよ。」と言いました。
水を飲み、食べ物を食べてからおかあさんの横で眠りにつく前に考えました。
「神様もおかあさんも『トラ猫の模様が強そうだし、カッコイイし、大好き』だと言っていた。僕のおとうさんは狩りが上手なトラ猫だった。僕はやっぱりトラ猫で良かった。」
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